第6章 勿忘草
「しっかし、何だここ。
どっかのグラウンドか?」
改めて黒尾が腰に手を当てグルリと見渡す。
「俺もそう思ったんだが、どうやら閉じ込められてるんじゃないかと思う。」
「は?」
「よく見てみろ、俺も初めはどっか小学校のグラウンドかって思ったんだが、周り……フェンスと桜の木で囲まれてて、出入口ないだろ。」
澤村に言われ、再度見渡すと確かに出入口はないようだ。
「ホントだな。
あ……けど桜の木の陰で隠れてるって事も考えられんじゃね?
それによく見るとフェンスも大した高くねぇみてぇだし。」
上手くすればここから出られるだろと、黒尾が一歩踏み出せば突然澤村の視界から勢いよく黒尾が消えた。
さすがの澤村もビクッとして視線を少し下に移せば、先程のように黒尾がうつ伏せになっている。
どうやら転んだだけらしい。
「黒尾……何で何もないとこでそんなにハデに転べるんだよ。」
スゲーな、なんて呆れる澤村に黒尾がちげーよ、と再びムクリと起き上がる。
「何かが俺の足に引っ掛かったんだよ。」
「はい?」
何かと言われても、何だ。
今は2人しかいないし、辺りはグラウンド独特の地面しかない。
特別雑草が生えてる訳でもないし、 引っ掛かるモノなど見受けられない。
お前がドジで転んだだけだろ?と、澤村が黒尾の足に目をやれば、一瞬にして全身から血の気が引いた。
そこには……
黒尾の足首を掴む、地面から生えた青白い手があった。
*