第6章 勿忘草
「ここは……」
景色に色が差したと思ったらそこは学校のグラウンドだった。
大きさから見て、澤村には小さく感じるのでどこか小学校のグラウンドだろうか。
若しくは、最初に来た学校のグラウンドとも考えられる。
ただ、グルリと見回しても校舎は見当たらず、回りは生徒が学校から出ない為のフェンス。
そのフェンスの手前には同じようにグルリと内側に、桜の木が葉っぱも着けない状態で囲っていた。
そして、ここで問題が。
360度フェンス、360度桜の木……つまり、入り口もなければ出口もない。
言うならばフェンスと桜の木の檻の中だ。
「……どういう事だ?」
学校のグラウンドかと思ったがそうではないのかと、澤村が一歩踏み出すと同時に足に何かぐにっと踏みつけた感触と同時に「ぎゃっ」と、蛙でも潰れたみたいな声がして足元に視線を落とす。
そこには赤いジャージ姿のうつ伏せになってる男子。
赤いジャージには白い字で「NEKOMA」の文字が書いてあり、加えてうつ伏せでもわかるような黒髪のツンツンした鶏冠のような髪型。
「黒尾、こんな所で何してんだ。」
「いやいやいやいや、人を踏みつけといて第一声がそれはおかしいだろ。
せめて無事だったのか!!の一言くらい寄越せ!もしくは人として謝れ!」
うつ伏せのままムクリと手と膝を立て体を起こしてからジトッと澤村を見る。
完全に起き上がるとジャージに付いた埃をくまなく手でパタパタと叩けば、澤村は踏んづけて汚してしまった背中の部分に気が付き、すまんという気持ちも込めて叩いてやった。
「所で、黒尾は何でうつ伏せになってたんだ?」
「何でって……確か穴?に落ちてから気付いたら真っ暗い空間にいて、どこだ?って一歩踏み出したらビタンだよ。」
「つまり何もない所で転んだんだな。」
可哀想にと澤村がニヤニヤ笑い、ふとひとつ気になる事が引っ掛かった。
「そういや、その暗い空間で男の子居なかったか?」
「は?」
男の子?と黒尾が首を傾げる。
しかし、誰もいなかったけど?と答えれば澤村はそうかとただ一言。
黒尾も気付いたら真っ暗い空間にいたのなら、同様に同じ場所にいて男の子を見たのだろうかとも思ったのだがどうやら違うらしい。
と、言うことは一時的に黒尾とは違う場所にでもいたのだろうか。
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