第5章 リンドウ
「スガ君?」
知り合いでも連れてきたの?と女性が聞くと影はニタリと、口の端を三日月みたいに吊り上げた。
「当たり前でしょ?_____に苦しめて貰おうと思って連れてきてあげたんだから、私に感謝なさい。
どうするかは任せるわ……だだ、これだけは教えてあげる。」
「……なぁに?」
口許の三日月を少し深くすると、女性にぐっと近付き、キスでもするかのように顎に親指を添えると、影が女性の耳に唇を寄せた。
「スガ君……きっと素敵よ。
年下にポジションを取られた時……素敵な顔をしてたもの。
それはそれは、貴女好みのね……。」
「そう……。」
「取り敢えず、私は行くわ。
消されたくなければ……始末してね。」
特にスガ君だけは……
それだけ言うと、影は女性から離れじゃあね、と女性……正確には女性と2人から離れて行った。
次第に影がリンドウの中にスッと消えて行くと、女性はクルリと振り返り「もう大丈夫」と言えば、そこで2人は肺一杯に酸素を取り込んだ。
何故だろう、助かったハズなのに生きた心地がしないし、寧ろ助かったかも怪しい気がする。
それに女性と影の会話を聞いていて疑問が沢山出来た。
スガ君と呼ぶ影。
菅原が正セッターから外れた事実を知ってる影。
何時でも女性を消せるであろう影。
花巻より菅原に恨みがあるような言い方。
疑問をまとめた結果、わかった事がある。
「俺よりお前が目の敵にされてね?
つーか俺、眼中にねくね?」
意外に俺ってば安全地帯?と言う花巻に菅原が怨めしそうな視線で睨む。
何かしたんなら、謝るなら今だぞと必死に笑いを堪えながら花巻は言うが、見に覚えのないのをどう謝れというのだ。
今は菅原が狙われてると思っているが、きっと影が今この場に現れたら間違いなく花巻も殺しの対象に入るだろう。
でなければ、こんな訳のわからない所に来るハズがない。
「つーかさ、あの影に心当たりないの?」
「え?」
*