第5章 リンドウ
「こんな所に来るなんて珍しいわね……何の用かしら……。」
「……ここにはまだ来てないの?」
「誰が?もしかして私の為に犠牲者を連れてきてくれたの?」
「えぇ、貴女好みの好きそうなのを……2人程……。」
「それはどうもありがとう。
だけどまだ見てないわね……どんな子を連れてきてくれたのかしら。」
くすり、と女性が冷たく笑う。
「1人は……あまり感情を顔に出さない奴。
もう1人は……スガ君……。」
「「っ!!!!」」
思わず、声を出しそうになった。
目を見開きながら花巻を見れば、花巻も同じように菅原を見ており、視線がパチリと合う。
今、菅原の名前を影が口に出した。
それも「スガ君」と言ったのだ。
菅原の名前が出てくるだけでもきっと驚くだろうに、それをスガ君の呼び方で口にした。
「スガ」と言う呼び方は基本同学年くらいしか呼ばない。
澤村や東峰、清水や同級生は「スガ」と呼ぶ。
下級生は殆どが「菅原さん」だが、日向や田中達みたくスガと呼んでも下級生なので「スガさん」呼びだ。
それなのに、この影は菅原の事を「スガ君」と呼んだ。
もしかして……と、菅原の頭にひとつの可能性が浮かんだ。
あの影は少なくとも菅原が知っている人物かもしれない……。
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