第5章 リンドウ
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「さて、ここからどうするべ。」
青空とリンドウの地平線を見回しながら菅原が困ったように腰に手を当てる。
「お前、よくもまぁ、さっきは人をホモ扱いしといて、誤解とけたら振り出しに戻るとか……いい根性してるよな。」
どうでもいいがどうしてセッターの奴はこうも自由なタイプが多いのか。
特に及川。
「そう言えばさ……この花も嫌な意味の花言葉あんのかな?」
「ん?……あぁ、あるんじゃねーの?」
菅原の言葉に応え、花巻は足元のリンドウを一本プチリと摘み取った。
生憎、花言葉には詳しくないから花言葉はわからない。
だけど、今まで何かしらの花は絡んでるからきっとこの花もそんな類いなんだろうなっては思う。
どうせ足掻いた所で今はどうする事も出来ないのだから、せめてこの一面の花畑は花言葉を知った時の為に、呪いや復讐、滅亡といったのよりかはもっと軽い感じの花言葉であってもらいたい。
でないと精神的にツラい。
「あれ?」
「何かあったか?」
何かを見つけたらしい菅原に花巻が近寄れば、あれ何だろうと一面リンドウの中、一点を指差した。
どこもかしこも同じ花しか咲いてない。
どれだよと目を凝らせば、離れた所に1輪だけうっすら光るリンドウが目についた。
何かと思い、2人がゆっくり近付いてみると何ら回りと変わらないリンドウ。
ただ、見つけた時みたいにうっすら光っているだけだ。
「何でこれだけ光ってんだ?」
「さぁ?」
取り敢えず、摘み取ってみるか?と花巻が屈んで手を伸ばし、リンドウの茎の部分に指先が触れそうになった所で、「触らないで」と背後から声がした。
ビクッとし、ゆっくり振り向くといつの間に後ろまで来てたのか、知らない女性が立っていた。
背丈は大きくもなく小さくもなく、肩まで伸びた髪の毛は全体的にパーマがかかっている。
リンドウと同じ色したワンピースを着ているせいか多少自分達より大人に見えた。
花巻は屈んでいた体を元に戻すと、女性に視線をやったままポン、と菅原の肩に手を置き口を開いた。
「こいつ……」
「……。」
「良かったな、きっと年上だ。」
「その話は忘れていただけませんか?」
人生最大の汚点でしかないから頼む忘れてくれ、と顔を覆った。
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