第4章 マリーゴールド
暫く研磨はポカンと口を開けたまま言葉を忘れた。
黒尾と会えて嬉しいハズなのに、素直に喜べない。
もし、これが日常ならばすぐに何かしらの返答はしていたと思う。
だけど今は違う。
この体育館には入り口も無ければ出口もない。
その空間には自分と岩泉しかいなかったのだ。
特別隠れれそうな場所もない。
そんな空間でいきなりどこからともなく、いなかった黒尾が現れた。
怪しむには充分。
けど、今まで気が付いたらその場にいるという状態もしばしば。
少なくとも皆は何かしらしている中で、いきなりこの学校へと来ているのだ。
だから、黒尾が突然現れてもおかしくない。
だけど、それでも研磨が喜ばないのは……
何事もなかったかのように何時もの笑顔をしているから。
だから……
今の状況で笑ってるのはおかしい。
「どうした?俺の顔に何か付いてるか?」
ん?っと除き込んでくる黒尾に研磨はスルリとわきを通り抜け、岩泉の所へと行こうとし立ち止まる。
自分より背の高い黒尾の影になって見えなかったが、その黒尾から避けた所でもうひとりいなかった人物が岩泉の目の前にいた。
及川徹。
きっと黒尾みたいにいきなり現れたんだと思う。
岩泉も怪訝な顔をして半ば警戒しているのが見てわかる。
「研磨どうした?お前様子がおかしいぞ?」
「……クロは……」
「ん?」
「クロはどうしてここにいるの?」
研磨の鋭い視線が黒尾を見据える。
「どうしてって、何言ってんだ?
今日は青城との練習試合だろ?」
「……何言ってるの……青城の人達と会ったのはついさっきだよ。
それに、俺達まだ変な所から抜け出せてないよ。」
「研磨、お前大丈夫か?」
「至って正常だよ。」
*