第3章 アザミ
恐る恐る上げた顔。
赤い海に佇む黒い影。
見た瞬間、目深く被ったフードからギラリと真っ赤な瞳が聖夜を射止める。
怖いハズなのに目が離せない。
いや、寧ろ怖いからこそ目が離せないのかもしれない。
そして、真っ黒な中に一際目立つ赤い花。
「アザミ……」
アザミの花言葉は復讐。
今となってはクロユリも睡蓮もこいつの仕業なのはわかってる。
だけど、そうまでしてここにいる人達が恨まれる理由がわからない。
ましてや、その中でも特に聖夜に恨みを抱く人物に誰も心当たりがない。
それに、音駒と梟谷の人達とは今日が初対面だ。
直接聖夜に恨みがあるのだとしたら音駒と梟谷はどこにも接点がないし、それに「私からあの人を奪ったコイツら」って言ってた。
あの人とは一体……。
だけど、今いるメンバーに共通する人物はたったひとりだけいる。
2ヶ月前から行方の知られていない疾走した人物。
寺嶋翔
翔が絡んでいるのならここにいる人達も幾らか説明はつく。
烏野の仲間、青葉城西のライバル、音駒と梟谷の交流、共通点はちゃんとある。
その中でも聖夜は実の妹になるので、1番関係性はあるだろう。
「ユルサナイ……ユルサナイ……ユルサナイ……ユルサナイ……ユルサナイユルサナイ……」
黒い影がブツブツ同じ言葉を繰り返す。
*