第3章 アザミ
のそりとしゃがれたような声をしたモノが開け放たれたままの扉から顔を出した。
黒いフードを目深く被り、僅かに覗く口許はこれでもかと言うほど三日月のように形が弧を描いている。
体格はマントをすっぽり被り、足元まで隠れているので男か女かわからないが、多分女性ではないかと思われる。
しかし、この状態で男も女もあるのかは怪しい所だ。
ずるり、ずるり、と引き摺るマントは既に引き摺られてる箇所がぼろ雑巾のようになっている。
右手には大きめの鉈を持ち、左手にはチクチクとした印象のピンクの花を1輪。
それは足元に転がる女の子の頭を一瞥すると、チッと忌々しげに舌打ちし、グシャリと頭を踏み潰す。
胴体が真っ二つになった時には血が一滴も出なかったのに、頭を踏み潰された瞬間、水風船が割れたように真っ赤な血液が地面を染め上げ、歪な池を作り上げた。
ヤバい……
頭の中に鳴り響く警報器。
こいつはヤバい。
早く逃げなければ、きっと女の子のようになってしまうのは確実だ。
「雑草の分際で、復讐の邪魔しないでよ……」
私は……
「私はあの人を奪ったコイツらに、復讐しないといけないんだから。」
特に……
瀬河聖夜だけは絶対に許さない。
「……私……?」
聖夜はゆっくり今一番の恐怖へと目を向ける。
*