第3章 アザミ
「及川……何があっても瀬河を守れよ。」
「わかってるよ。」
「絶体絶命になったらお前が命に変えても守りきれ。
つーか、お前だけ犠牲になれ。」
「……岩ちゃん、何かおかしいよ日本語。」
お前だけ犠牲になれとか、せめてそこは瀬河はお前の命に変えても必ず守りきれとかじゃないの?
何で俺しか犠牲になってないのさ!
取り敢えず、今は言わないでおくけど戻ったら抗議してやる。
絶対抗議してやる。
「及川……どんまい。」
「マッキーも今そんな慰めいらない!」
何がどんまいだよ!と反論。
そんな些細なやり取りに皆は呆れつつも、ここから助かったら今みたいな日常が待ってるんだな、とささやかな未来が見えた気がした。
だから、こんな所で殺される訳にはいかないし、もし翔がいるのだとしたら翔を見付けて皆で帰る。
瞬間。
再び学校のチャイムが鳴り出し、空気が張りつめた。
神経を尖らせたまま周りを警戒する。
今度は何が起こるのかと思った矢先、足元がグラリと波打ち、そのまま浮遊感に襲われた。
分かりやすく言えば、ジェットコースターで高い所から急激に落下するあの気持ち悪い感覚。
床が抜け、真っ暗な闇の中に落ちていく。
「私が味わったのはこんなものじゃない……」
お前らも味わえばいい。
奪われた時の悲しみ。
失った時の絶望。
瀬河聖夜に教えてもらえばいいのよ。
あいつが私をこんなにしたんだから。
お前らももがき苦しめ。
それが、私の復讐になるのだから。
落ちていった穴に、アザミを投げ入れ、影も姿を消した。
*NEXT*
花言葉:アザミ【復讐】