第2章 睡蓮
「行方不明?」
聖夜が言った事に東京サイドの皆が眉を寄せた。
「行方不明ってどういう事だよ。」
今初めて知った事実に黒尾が半ば聖夜を問い詰めるように聞き返せば、澤村がそれを遮って「俺が話す」と話に割って入った。
ちらりと聖夜を見れば、隣に座る及川に抱き寄せられているので、聖夜の事は及川に任せ黒尾に視線を戻す。
「瀬河が言ったように翔は2ヶ月前から行方不明になってんだよ。
ちょうど俺らが東京遠征から帰ってすぐに。」
「はぁ?お前それ警察には……」
「もちろん警察には届けたさ、だけど手掛かりなくて一度捜査は打ち切られたんだ。」
「……ふ……ざけんな!!!!
何で俺らには黙ってたんだよ!!!!!!!」
感情的になった黒尾が立ち上がると、それを隣にいた研磨がジャージの裾を引っ張りながら「落ち着きなよ」と黒尾を静かにさせる。
黒尾は研磨を見た後で「わりぃ……」と元の位置に座ると、今度は澤村の隣にいた菅原が変わりに説明してくれた。
「ホントはさ、お前らにも言おうとはしたんだ。
だけど、大地が試合前に変な心配させんなって敢えて連絡しなかったんだよ。
それに、翔が行方不明になって一番辛いのは聖夜ちゃんだから。」
菅原が聖夜に目を向けると、つられて黒尾も聖夜を見る。
聖夜は未だに及川に抱き寄せられたまま、視線は伏せられていた。
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