第2章 睡蓮
「あなたお名前は?」
「_____」
「え?」
聖夜が名前を聞けば口を開いてくれたが、声が聞こえない。
聞こえるように身を乗り出した直後……
女の子の後ろから、そのまま爪の長いガリガリに痩せ細った手が、聖夜目掛けて勢いよく襲いかかってきた。
「聖夜ちゃん!!!!!!!」
及川が聖夜の腕を掴んで強引に引っ張ったのと、手が聖夜の頭があった位置を掻きむしるように握ったのはほぼ同時だった。
及川に腕を引かれ、勢いのまま後ろに尻餅をつけば、聖夜を立たせる為にそのまま力任せに掴んでる腕を上へと持ち上げる。
「ごめん、大丈夫?
文句なら後で聞くから今は取り敢えず逃げよう。」
「あっ……うん……」
「瀬河さん大丈夫?走れそう?」
同じように夜久も聖夜を気づかってくれるのに、今は無言で頷くのが精一杯だった。
改めて前を見れば、女の子は何故か3人に背を向けて立っている。
貴女もと、聖夜が手を差し出そうとしてその手は前ではなく後ろへ。
「聖夜ちゃん、走るよ!!」
言うが早いか左右それぞれ及川と夜久に手を引かれ、走り出す。
だけど、あの子がとチラリと後ろを見ればホログラムでも通り抜けたかのように、先程の手が女の子を貫通し追い掛けて来た。
何かを捕らえようとしてるみたいに、手は必死に空気中を握り潰していく。
見た目は女性の手ではあるのだが、さっきは一瞬の出来事でわからなかったが改めて見ると手はかなり大きいモノだった。
恐らく、捕まってしまったら頭はスッポリ手に多い尽くされそのままグシャリとやられてしまうだろう。
もし、あの時徹君が引っ張ってくれなかったらと思うと今更ながらゾッとする。
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