第13章 クワ
「あんたに私の気持ちがわかるものですか!
雑草なんかに人の気持ちがわかってなるものですか!
いいからさっさとあのふたりを片付けなさいよ!
でないとあんたはここから出られないのよ!」
「別に、出られなくてもいいさ、そもそも、_____があのふたりを僕の所に連れてきたのが間違いだよ。
僕はあの子達に助けられたんだ。
それを_____の我が儘で殺すなんてするわけないだろう、そんな事したら翔が泣く...僕をここまで育ててくれた田中君や月島君を裏切るなんてするものか。」
「?」
さっきからこの人は何を言っているのだろうと田中が首を捻る。
男性が田中達に助けられたとは一体...助けられたのは田中と月島だ。
それに一番気になるのは育ててくれたという言葉。
育ててくれたとは何を意味しているのか。
「お前が田中君と月島君を連れてきたのが悪い。
かと言って他の子だったとしても僕は殺していたかわからないけどね。
僕自身、道連れの意味はあるかもしれない...だが、意味はひとつだけではないんだよ。
そもそも、花や木だって生きて......」
男性の話は影により遮られた。
壁に刺さっていた鉈が素早く引き抜かれ、そのまま今度は右から左へスライドされた物が男性の胸から上下真っ二つに分断されたのだ。
その瞬間、保健室は消え、辺りはどこか外に変わり、近くに桑の木が1本だけ生えているだけになり.........そして、影がゆらりと田中に向いた。
殺される。
逃げなきゃと思うが足がすくんで動けない。
それに今自分が逃げたら矛先は月島に向かうだろう。
ならどうすると頭をフル回転させるがどうにも突破口が浮かばず、気が付けば自分の目の前に影が移動していて...
今まさに鉈が降り下ろされる寸前だった。
あまりの恐怖に悲鳴も上げる事すらままならず、田中は死を覚悟しながらもぎゅっと固く目を瞑る。
が、痛みも何もいつまで経ってもやってこず、恐る恐る目を開ければ影の姿は消えていた。
付近を見回してもどこにもいない。
月島の無事を確認し、田中はひとつの異変に気が付いた。
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