第13章 クワ
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何が起きたかすぐに理解が出来なかった。
男性が木の実を採って来ると言い、窓際に扉を作り出し、ノブに手をかけ開けた瞬間、男性はいきなり体を目一杯下へ屈んだかと思いきや、立っていた時の男性の胸辺りを大きな鉈が左から右へスライドされ、そのままの勢いで壁にバキリと鈍い音を立てて突き刺さった。
田中は顔をサッと青ざめるも、男性はすぐに立ち上がり、田中の方を見ながら何も無かったかのように、大丈夫かい?と声を掛ける。
田中はあまりの事に声を失い、頭を縦に振るのがやっとで、男性は無事を確認すれば安心したようにニッコリ微笑んだ。
そして、屈んだ時に勢いで手放してしまった籠を拾い上げ、窓の外を睨み付ける。
「_____、何の用だ?」
「?」
また、男性の声にノイズが掛かった。
男性が外に声を掛けると共に、ズルリズルリと布を引き摺った音をさせながら影が姿を表し、田中が瞬間的に息を飲んだ。
しかし、影は田中には目もくれず、フードで顔を隠しながら男性と対峙していた。
「いつになったらそのふたりを殺してくれるの。」
しゃがれた声が田中の背筋を凍らせる。
「悪いけど、僕は必ず殺すなんて一言も約束はしてないよ。
ましてや、月島君は病人なんだ、静かにしてくれないか。」
影に物怖じもせず、男性は淡々と言葉を告げていく。
恐怖に震える中、田中に疑問が浮かび上がる。
なんでこの人は月島の名前を知ってるのだろうか。
ついさっき会ったばかりで、月島の名前を言った覚えもない。
なのにどうして月島の名前を知っているのだろうか。
「こんな刃物を振りかざすなんて物騒にも程があるだろ。
本当に君、女の子なのかい?それじゃあ、彼に愛想をつかされるのも無理はないよ。
寧ろ、僕は翔に同情すら覚えるよ。」
「え...!」
男性の言葉に田中が息を飲んだ。
この人、翔さんを知っている?
というか、この人の影に対する物言いってまるで......
「煩い...煩い煩い煩い煩い!!」
影が不気味な声で叫んだ。
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