第13章 クワ
あの、桑の木が折れている。
正しくは男性によって折られていた。
確かに真っ二つにされた男性はそれが嘘のように元に戻っており、桑の木を片足でへし折ったらしく、足元には桑の木が踏まれたまま。
もともとそこまで幹は太くなかったから折ることは簡単だったのだと思う。
「大丈夫?」
呆然とするしかない田中は言葉を発するのも忘れ、男性を凝視していると、男性の方から声を掛けてきた。
「え...あ...はい...あの......影は...」
「もうここにはいないよ。
だから安心しな。
木を折ってしまったからあいつはもうここには来れないしね。」
「木...て。」
「この桑の木...この木はあいつをここに存在させる為の道具。
酷いよな...あいつの都合で利用されるなんて。
植物だって生きてるんだ...植物にも心はある...だからこうして僕はここに存在している。」
「...それってどういう...」
瞬間...田中達の空間にどこからともなくチャイムが響き、田中に急な頭痛が襲ったかと思えば、そのまま意識は途切れその場に倒れ込んだ。
*