第2章 睡蓮
「俺も、そのクロユリ見た。
覚えてるのは、岩ちゃんと一緒に帰ってる時、道でその花を何本か持ってる女の子を見掛けてから記憶がないや。
気が付いたらこの教室で、何故か膝に聖夜ちゃんが可愛い顔して寝てたんだよね。」
目覚めた時の事を思い出したのか、及川の顔が少し和らぐ。
1つ分かったのは、何かしら皆ここに来る前にクロユリを見たのを最後にこの場へ来ている。
ーーーーーーーーーー
「やっくんさっき音駒って言ってたけどさー、ここら辺の学校じゃないよね?」
何処までも続く長い廊下をひたすら歩きながら不意に及川がそんな事を聞いてきた。
最終的にあの教室にいてもきっとどうにもならないだろうという及川の考えに、まずこの建物の中が何なのかを詮索してみる事にし、3人は教室を出たのだ。
しかし、行けども行けども同じ景色が続くだけで変わったモノは何もない。
寧ろさっきから歩いてるが階段すらなかった。
不思議なのは暗い中でも何故か視界がハッキリしてる事だが、今更そんな事では驚かないくらいには多少なりともいまの状況に順応しつつある。
慣れとは怖いものだ。
もしかしたら慣れこそが一番怖いモノかもしれない。
「まぁ、つい最近まで衰えてはいたから知らないのも無理はないかもしんないな。
音駒は東京にある学校。」
「東京っ!!」
夜久の言葉に及川ははぁ?と眉を寄せた。
*