第2章 睡蓮
聖夜の一言から暫く沈黙が続いた。
正直、花言葉なんかが今のこの不可解な状況に関係するかは分からないが 無関係とも完璧に否定しきれない。
嫌な汗が聖夜の背中にじんわり滲む。
いつの間にか薄暗かった部屋も、すっかり陽が落ちきって真っ暗になっていた。
すぐ隣に及川も夜久もいるはずなのに、恐怖も相まってか1人取り残された錯覚になった途端、突如目の前が白く発光し慣れない視界に目を閉じ、何事かとゆっくり目を開ける。
一歩前には夜久、隣には及川。
先程1人取り残された錯覚になったものの、翌々見れば聖夜の手は及川にしっかりと握られていて少なからずほっと心が和らいだ。
どうやら手から完全に血の気が失せ、感覚が無くなっていたらしい。
明るくなって明白になった教室の中。
やっぱり教室の中は何もなく、あるのは目の前の黒板のみ。
普通なら後ろにロッカーがあるのだろうが、どうやらロッカーも無いらしい。
黒板に向かって右の廊下側の出入口は前後にそれぞれあり、今の状態ではピタリと閉まっている。
先程まで僅かな明かりを入れていた窓に目をやり、そこでまた不可解な自体。
窓が消えている。
確かに、電気が付く数分前まで僅かな陽が差して少なからず今の教室を照らしていたのに、その陽が差し込んでいた窓が壁になっている。
じゃあ今までのあの明かりは何だったのだろうと思ったのもつかの間。
夜久が2人に、コレ……見てみろよと言えば、コレと言われたモノを見て絶句。
枯れきっていたクロユリがどういう訳か大輪の花を咲かせている。
さっきまで確かに枯れていたのに、今となっては生き生きと咲き誇り3人を凝視しているかのように、花もこちらを向いている。
くすんだオレンジ色から目が離せない。
「なぁ、何なんだよここ……」
「ハッキリしてるのは普通じゃないって事だよね。」
聖夜ちゃん、大丈夫?と握っていた手を離し、肩を抱き寄せる。
トンっと頭が及川の胸に当たり、それだけでも恐怖がだいぶ和らいだ。
「何でお前そんな冷静な訳?」
「冷静ってゆーか、割り切ったってゆーか。
どーせもうここは普通じゃないみたいだし、俺もその花見て思い出したよ。」
え……と、聖夜が及川を見上げた。
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