第13章 クワ
「いや...まぁ、そっすね。
好きっつーとまぁチームメイトとして?」
「そっか...仲間は大事だからね。
所で、君は果物は好きかい?」
「果物?」
「正しくは木の実かな?ほら、外にあるあの赤い実だよ。」
首を傾げる田中に、男性はニッコリ笑ってスッと窓の外に視線をやり、つられて田中もそちらに目を向け、あぁ、と頷いた。
そこに見えるのは先程廊下から不気味に見えていた木の実で、外に1本だけポツンと寂しそうに立っていた。
「あれ、食えるんすか?」
「うん、クワの実だよ。
赤と黒の実が着いているだろ?黒い実が食べ頃でとても美味しいよ。
あの子は僕がここに来た時からずっと一緒なんだ。」
「あの子?」
「桑の木だよ。
なんだか愛着が沸いてしまってね、そのうち名前も着けてあげようかなって考えてるんだ。
おかしいかな?」
「いいんじゃないっすか?
そういや、俺の知り合いにも名前つける人いましたし。」
困ったように笑う男性に、田中が頭の後ろに腕を回しながら人それぞれっすよと言えば、男性がきょとんと見た後で小さくありがとうと呟き、今採ってくるから待ってて、と近くにあった小さな籠を手に取った。
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