第13章 クワ
取り敢えず、今の所は影も、訳のわからん猟奇的な何かもいないみたいなので、そっちの問題は何かが表れてから対処する事にしよう。
と、決めた直後に誰かに田中の肩がポンと叩かれた。
そして、今に至る。
「すんません、マジ助かりました!
ありがとうございます!」
月島のタオルをこまめに取り替えてくれる男性に深々と頭を下げる。
そんな田中に男性が優しく微笑む。
「そんなお礼される程の事はしてないよ。
困った時はお互い様だからね。」
「それにしてもお兄さん、ここに住んでんすか?
てゆーか、もしや影の仲間...いゃ、それよりもこの保健室はどこから!」
一気に質問してくる田中に男性はクスクス笑った。
「君、面白いね。
僕は_____の仲間じゃないよ。」
「え?誰ですか?」
男性の言葉に一部雑音が混ざって聞こえない。
田中が不思議に聞き返すと、男性は軽く小首を傾げた後で、すぐにあぁ、と聞き返された理由に気付き、ほんの一瞬寂しそうに微笑んだ。
「そうか、君には聞こえないのか。
何でもないよ、気にしないでくれ...まだ望みがあると言うことだね。」
「?」
「変わりに他の質問に答えよう。
そうだよ、僕はここに住んでいる...と言うか、正確にはここに作り出されたって方が正しいかな。」
「作り出された?」
「あぁ、彼女のくだらない感情の為にね...僕はここから出られない。
この保健室も...僕がここの空間の主だから、好きに出したり消したり出来るんだ。」
実にファンタジーだろう?と笑う男性に、田中は内心今は半端ないホラーですと突っ込んだ。
そう、田中と月島にしてみればデッド・オア・アライブ状態なのだから。
この保健室だって、どこからともなく表れた男性がどこからともなく壁だった場所に扉を作り出し、保健室を出したのだ。
「あの...すぐよくなりますよね?」
「ん?」
「こんな所で熱出しちまうとか...」
「...君はこの子の事がよっぽど好きなんだね。」
「えっ...」
男性の言葉に田中がきょとんとし、「違うの?」と田中に聞いた。
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