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涙が落ちるその時までに[ハイキュー]

第1章 3月9日~及川徹~


『とーる!帰ろ!』

自分の部活の集まりが終わった「あなた」は、俺のところに駆けてきた。
岩ちゃんと話していた俺は、「あなた」の頭を撫でる。

『??どしたの?』

「ちょうどいい場所にあるな、と思って」

『…岩ちゃん聞いた?コイツ私のこと侮辱したよ』

岩ちゃんは、俺が「あなた」に対して抱いている恋心を知っている。
そんな岩ちゃんは、苦笑しながら「あなた」に微笑む。

「三年間、ありがとな」

「あなた」は花がほころぶような笑顔で

『こちらこそ!これからもよろしく!』

そう言われる岩ちゃんが羨ましかった。


帰り道、二人で歩いていく。
最後の下校。

いつもの笑顔で「あなた」は俺の手を握った。

『ちょっとこっち来て!』

「は?ちょ、ちょっと待って!」

グイグイとすごい力で俺の手を引く「あなた」。
そんなところは、昔から変わらない。

山の中をかき分け、ようやく開けた場所に出る。

そこに広がるのは、空いっぱいの羊雲。

『すごいでしょ!この前見つけたんだ』

褒めて欲しそうに笑う「あなた」。
でも、俺は何も言わない。

何も言えない。

そんな俺に気づいてるのか気づいてないのか
よくわからない「あなた」は、大きく伸びをした。

『徹はさ、誰よりも負けず嫌いな分、すぐに自分のこと卑下しちゃうでしょ?
落ち込みやすくて、実はすっごい泣き虫』

「…喧嘩売ってんの?」

ムッとした口調で俺がそういえば、「あなた」は悪戯っ子のような笑顔で笑った。

『だから、つらいときはここに来て。
見て、こんなに空って広いんだよ!?
それに比べれば、徹の悩みなんてちっちゃいもんでしょ?』

それでもダメな時は、私に電話してもいいからね。

ねぇ、「あなた」にとって俺って

いったいなんですか?

そう声に出そうとしたけど、それさえ口にできない。

俺は臆病だ。

でも、その代わりに

涙が流れ落ちた。
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