第1章 3月9日~及川徹~
『ちょ!?徹!?』
俺の涙に慌てる「あなた」を思い切り抱き寄せた。
「ほんとに行くわけ?」
『とお…』
「俺が弱いってわかってるのに、置いていくんだ」
困らせてる。わかっていても、涙は止まらない。
そばにいて。
ずっとずっとそばにいて。
俺の隣で
笑っててよ。
『徹、私行くよ』
知ってる、「あなた」が俺の言葉で止まるような人じゃないって。
『ごめんね』
謝らないで。
『大好き』
俺も
掠れるように呟いた俺に、「あなた」は笑う。
『徹のこと、何回も思い出すから。
大丈夫、徹は独りじゃない』
だから、大丈夫。
「あなた」のその言葉、その表情。
俺は一生忘れない。
瞳を閉じれば思い出す。
瞼の裏に「あなた」がいる。
それだけで強くなれたんだ。
「あなた」にとって俺は、どんな人でしたか?
(私にとってあなたは、初恋の人でした)