第4章 覚醒した能力
なにも考えていなかった。ただ、がむしゃらに走った。
突然飛び出してきたあたしにいち早く気付いた植え込みの敵は、まずはあたしを標的にすることに決めたようだ。
ひゅん──
鋭い矢が放たれた。
「楠木ーっ!」
湊先輩のあたしを呼ぶ声が遠く聞こえる。
あたしは植え込みの敵の位置を確認すると、矢とクナイの飛距離を計算し、自分もクナイを投げつけた。
キンッ!
鋭い金属音とともに、純白の羽と漆黒の刃が空を舞う。
相殺成功。
一般人のはずの少女が為したことは思った以上に敵の注意をひきつけたようだ。辺りがざわつく。
「あやつ、一般人ではないぞ…!」
「手加減しなくてよい!」
「あいつだ!あいつを捕らえろ!」
自分自身のしたことに驚く間もなく、敵の殺意はこちらに向いた。
どういうこと?あたしを捕らえる?え?
20数人から刃を向けられていることを、いまいち理解できていなかった。
しかし敵は待ってはくれない。
一斉に攻撃は始まった。