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あたしがオトそうと思ってたのに!

第1章 Prorogue


「~~~!!!」

さくらと寄った喫茶店で、まどかは先程の一部始終を思い返してイライラしていた。

(ものすごい屈辱を受けた気分…!)

鼻で笑われるのも初めてだし、こんなに相手にされないのも初めてだし、自分中心に世界が回ってるみたいな言い方をされたのも初めてだった。

(悔しい…)

確かに、誰でも自分のことを好いて当然だという考えが無かったわけではない。

(でも本当にそうだったんだもん…)

「手強いね~」

アイスコーヒーをかき混ぜながら、さくらが言った。手元ではガムシロップが3つ空になっている。

「……意味わかんないよ」

「まぁ、今までにないタイプだもんねぇ」

幼稚園のときからずっと一緒の幼なじみに言い寄ってきた男の数は数知れない。
だからこそさくらは常に冷静に彼女と接することができるのだった。

「私ってそんなに自己中?!」

「……いや、自己中ではないよ」

「じゃあどうして一樹くんにあんなに言われなきゃならなかったの…」

「どうしてって言われても…」

さくらは苦笑いしてアイスコーヒーを飲むだけだった。

「それよりさ、明日の体育は体育祭の練習でしょ。パン持ってきてよ?」

「…うん、大丈夫」

そういえば、一樹は何部なのだろうか。
クラス一の俊足らしいが、まどかは彼の走る姿を見たことがない。

「一樹くんって何部?」

「どこにも入ってないよ。スポーツもしてないらしいし」

なのに一番速いのってスゴいよね、とさくらが頬杖をついて呟いた。

(ますます分かんない、一樹くんって人…)
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