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あたしがオトそうと思ってたのに!

第1章 Prorogue


まどかとさくらが振り返ると、噂の張本人がさらさらの深い茶髪を風にふわりとなびかせて立っていた。
突然のことに二人は固まる。

「あ~、今の聞こえちゃった…?」

さくらが申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせた。
一樹は表情を変えずに淡々と続ける。

「聞こえるもなにも、目の前で自分の話されていれば気になるでしょ」

「ですよね……」

がっくりと肩を落としたさくらをよそに、まどかは彼の前にぴょこんと立った。

「一樹くん!ずっとお話したいと思ってたんだ!」

「ふぅん、そうなんだ」

メガネの奥の目をスッと細め、一樹はまどかを見下ろした。
背中までのふわふわの髪を揺らして笑顔で自分を見つめる彼女の目は嬉しそうに輝いている。

「……」

目を逸らし、めんどくさそうにため息をついて一樹は歩き出した。
まどかは慌てて彼を追いかける。

「ちょっと待ってよ!」

「待つ義理がどこにあんの?」

まどかには目もくれずにスタスタと歩く一樹。

「どこって…」

返答に困る彼女。

「別にないけど…一緒に帰ったりとか…クラスメートなんだし…」

「俺じゃなくても、あんたならいくらでもいるんじゃない?」

「私は一樹くんと帰りたいの!」

なかなか思い通りに事が運ばず、焦っていたまどかは少し大きな声で言い返した。

「なんで?俺のこと好きなわけ?」

間髪を入れずに聞き返される。

「……え」

「普通はそうなんじゃないの?」

「ふ、普通…?」

質問の意味がよく分からなくて、まどかはいよいよ黙り込んでしまった。

(っていうか、普通みんな私と喋りたいとか思うんじゃないの?)

「あんたがなに考えてるのかはどうでもいいけどさ、」

一樹はチラッとまどかを振り返り、鼻で笑った。

「俺を"みんな"と一緒にしないでくれる?」

(?!)

呆然とするまどかを残し、一樹はそのまま行ってしまった。
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