第2章 翻弄
翌朝、登校するなりさくらが飛び付いてきた。
「ま、まどか…戸内くんと付き合うことになったの?!」
彼女は情報通だ。
当然知られると思っていたが、さすがにここまで早いとは思っていなかった。
彼女に打ち明けたくてたまらなかったまどかは、さくらに抱きつく勢いで話し出した。
「そ、そうなの。それについて相談したいことがあるんだけど───むぐっ?!」
「はい、おはよ」
いつの間にか背後に一樹が立っていた。
口を手で思いっきり塞がれ、まどかは一瞬呼吸困難になる。
「日比野さん、おはよう。今日もいい天気だね」
一樹はニコッと微笑み、さくらからまどかを引き離した。
口を塞いでいた手はすぐに離され、まどかは彼を睨み付ける。
「うわ、怖い怖い」
彼女が息をつくのもつかの間。
次の瞬間には、一樹が彼女の耳元に顔を近づけ囁いた。
「これは"二人だけ"のゲーム。誰にも助けを求めちゃダメだから」
びくっと肩を強張らせ、まどかは彼から仰け反るように離れる。
「なっ、何それ…」
「そのままの意味」
いつの間にか無表情に戻った一樹は、まどかの頭をポンと叩いた。
「???」
その手が優しかったので、まどかはきょとんとする。
「じゃ、先に行ってる」
一樹はそう言うと階段を登っていってしまった。
まどかは思わずそれを目で追った。
そんな二人の様子を、さくらは唖然として見ていた。