第1章 Prorogue
いくら話しかけるといっても、あまり厚かましく思われたら逆効果だ。
どことなく冷めている一樹は、しつこいのは嫌いだろうとまどかは経験から予測する。
(きっかけを待つしかないよね)
*
それから数日。
まどかは二人きりになれるような場面に出くわさないかと期待していたのだが……
(隙が無いな)
下駄箱で話したとき以来、挨拶はおろか目も合わない。
今日もまた、彼の後ろ頭を見るだけで一日が終わってしまった。
(私のこと認識してないの?!)
学校中の人気者の私の存在をここまで気にかけないなんて…と、まどかは頭を抱えた。
「心の声漏れてる」
「へ?!」
振り返ると、さくらが呆れた顔で立っていた。
「学校中の人気者って自分で言えちゃうんだからスゴいよね…」
さくらはやれやれと肩をすくめた。
花がほとんど散って葉桜になってしまっている並木道を帰りながら、まどかはさくらに捲し立てた。
「もう、聞いてよ!一樹くんと全然話せないんだけど!」
心外だ、と頬を膨らませる幼なじみにため息をつき、さくらは苦笑いした。
「だから言ったじゃん、相手にされないよって」
「そんなのあり得ないもん」
「その自信はどこから来るんだか」
「絶対に絶対に無視できなくさせてやるんだから!」
まどかが空に向かって両手を突き上げたときだった。
「誰を無視できなくさせるって?」