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あたしがオトそうと思ってたのに!

第1章 Prorogue


まどかにとって退屈で仕方ない数学の授業。
先生は教科書に書いてあることをそのまま写し喋るだけなので、クラス全体が集中できていない。
寝たりケータイをいじったり、各々が自由に過ごしているのが、最後列の彼女からはよく見える。

当然、一樹のこともよく見える。

今朝の自分に対する態度を思い返しながら、まどかはムスッとした顔で彼の後ろ頭に目をやる。
寝るでもケータイをいじるでもなく、時折ページを捲りながらノートに何かを書き込む姿は、さすが成績上位者と言われるだけある。
まどかも決して成績が悪いわけではないが、おそらく数字は彼より一桁多い。

(女の子に興味のない草食イケメンか…)

なおさら自分に振り向かせたい、と力を込めて消しゴムを握りしめる。
緊張したりおどおどしたりして自分と話せないのではなく、話そうとしない彼をオトすには───

(ひたすら話しかけるしかないかな)

一樹のことが気にくわなかったまどかだったが、俄然やる気を起こし思わずにやけた。

(…絶対に好きにさせてやるんだから!)


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