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あたしがオトそうと思ってたのに!

第1章 Prorogue


「でもどうして突き指したの?」

「……」

「一樹くん、球技には出ないじゃない」

ここは自分のペースで押し切ろう。
せっかく二人きりなんだし。

(打ち解けるいい機会…?!)

「私、球技ダメなんだよね~。ボールを思った方向に飛ばせなくってさ~」

「あんたのこと聞いてないんだけど」

「……」

さすがにカチンときて、まどかは顔を上げ彼の方を振り向いた。

「ちょっと!そんな返し方ある?!無愛想にも程があるよ!」

彼女の少し大きな声に、一樹は動作を止めた。

「だってあんたの話に興味ないし」

自分を振り返った一樹があまりも無表情で、まどかは口ごもった。

「き、興味ないの…?」

「みんなが自分に関心を持ってくれていると思ったら大間違い。厚かましいにも程がある。言ったじゃん、俺を"みんな"と一緒にすんなって」

相変わらず淡々とした話し方だと思った。
彼が本当に自分のことをなんとも思っていない…いや、厚かましいとまで思っていることに、まどかは呆然とした。

「……ふふふっ」

何故か笑いが込み上げてきて、まどかは肩を震わせた。
そして言った。

「決めた。私、やっぱり一樹くんをオトす」

改めて一樹を見ると、さっきと表情を変えずにこちらを見る彼と目が合った。

「……」

「今まで私のことを好きにならなかった人はいないの。当然、一樹くんだって例外じゃない。紛れもない"みんな"の内の一人なんだから」

「へぇ、傲慢だねぇ」

「絶対…絶対に私を好きにさせてやるんだから」

まどかの言葉に、一樹は眉をひそめた。

「……くだらない。でも、そこまで自惚れたおめでたい人間に、俺なんかがオトせるのかな?」

彼の顔が楽しそうに歪む。
その表情が冷たく、思わずまどかはゾッとした。
そんな彼女をじっと見据え、一樹は言った。

「なんなら、逆にしようよ」

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