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あたしがオトそうと思ってたのに!

第1章 Prorogue


「ただオトすのも退屈だし、付き合ってることにしようか?」

「───はぁ?!」

まどかは耳を疑った。
一樹がそんなことを言うようなタイプだと思わなかった。
しかも自分がオトされるらしい。

「恋人同士がすることを俺らもやる。そうしてるうちに俺が落ちたら俺の負け。あんたが落ちたら、あんたの負け」

思わぬ展開に、まどかは狼狽する。
おそるおそる尋ねた。

「恋人同士って…一緒に帰ったりデートしたりってこと?」

「それ以外に何があるの?」

「な、ないよ」

(さっきから完全に一樹くんのペース…)

ふふふ、といかにも性格の悪そうな微笑を浮かべて彼はまどかを見下ろしている。
まどかは、悔しくて手に持った氷嚢を握りしめる。
追い討ちをかけるように一樹が言った。

「異論ないよね?」

ここまで言われたら引き下がりたくない。

「分かった。正々堂々勝負よ。絶対落ちてやらないんだから」

まどかはソファーから立ち上がって、一樹を正面から睨み返した。




こうして二人は表面上は付き合うことになり、奇妙な勝負をすることになったのだった。

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