第4章 30日目
「え」
「思い出に浸れないくらい
私でいっぱいにしてあげるから、覚悟して」
そう言って私の頬を指で撫でる彼の、目を細めて左の口角をあげるその顔に心臓が暴れだす。
「…だっ、ダメっ…」
耐えきれない心臓を守るため、自分の視界を手で覆うと、それを剥ぎ取られてそこに見えた笑顔。
「ダメじゃない、ほらちゃんと見て」
何かを企む、ズルい微笑みは私を逃がしてはくれなかった。
「……っ」
近すぎるその熱い視線が恥ずかしくて、視界が少し滲むと
「…ねえその顔、ずげえ好きなんですけど」
と囁かれる。