第10章 36日目
ピシッと背筋を伸ばして立ち、少し引きつる笑顔を見せたのはさっき「遅くなるから」とメールをくれた人。
私の質問には答えず「お疲れ様です。」と照れたように笑う。
「何でここにいるのよ、さん。」
「へへ、驚いた?」
「…いや、全然。」
「ええ!?」
この世の終わりのような顔をする。驚いてないなんて、本当は嘘。驚いた、けれどそれよりも違う気持ちが上回ってしまったから。
下を向きブツブツ何かを言いながら、落ち込むような顔をするに近付いた。
「嬉しい。」
「え?」
が目を大きくして顔を上げる。
「今日は会えないと思ってたから、嬉しくて。」
頬を染めるの頭に手を置いた。いつものようにキスをしようと顔を近づけると
「…あ、いや、二宮くん、」とそれを止められた。
「…なんすか。」
今更キスひとつ恥ずかしいなんて、バカですか。そう思って不機嫌な顔をしたのに、お構いなしで優しい笑顔を向けられた。
「お誕生日、おめでとう。」
一度落ちた気持ちが上がる早さは尋常じゃない。その言葉に喜びも倍になる。誕生日を祝われて、こんな気持ちになるなんてどれくらいぶりだろう。
「ありがとう。」
笑うに、それを見てつられて笑ってしまう自分になんだか照れ臭くなった。