第2章 招かれざる者
横山は、長い長い廊下を一人で歩いていた。
そして、
地下へ通じる階段を下り、
重く閉ざされていた扉を開けた。
その部屋には綺麗に整頓された無数のワインが
所狭しと並べられていた
横山はその奥で、ワインを手に取って眺めている男を
発見し、近寄って行った
横山「ずっとここに居ったんか?」
そう尋ねると、ワインを持った男は静かに顔を上げた
大倉「少し考え事をしたかったから...」
寂しそうにそう言うと、
手に持っていたワインをゆっくりと棚に直した
横山は、その様子を静かに見届けると
横山「獲物が来た、準備しろ」
と言った。
その言葉に、大倉の表情が変わった
横山「あと、お前の女....」
横山はそう言いかけて、言葉を止めた
大倉は不思議に思い
大倉「横山くん?」
横山はサッと手で大倉の口を塞ぎ、話を止めさせた
横山「しーっ」
そして片方の手で
自分の口元に人差し指を置き、
言葉なきメッセージを大倉に送った
大倉は静かに頷く
重い沈黙が二人に流れた
その時、ワイン瓶が動く音がした
ネズミがワインの間から駆け抜けたのだ
大倉「....ネズミ?」
その言葉を聞いて横山は首を振った
横山「違う、このホテルにはまた
招かれざる客が来てしまったようだ....」
そう言うと、自分の瞳を深紅に染めた。
大倉は、不思議そうに横山を見た
彼は、少し俯きながら考え事を始めた
大倉はその様子を見て
独り言のように話し始めた
大倉「最近 彼女が僕を拒否しているんだ...」
横山は顔を上げた
横山「ケンカしたんか?」
大倉は静かに首を振った
大倉「全く心当たりはない....」
辛そうに呟く
そんな大倉を見つめて、
横山は肩を叩いた
横山「女心はいつの時代も
俺らからすれば複雑やしな....」
その言葉を聞いて大倉は小さく笑った
その笑顔を見て横山は彼に言った
横山「呼んでない客は、
どこに居るか分からんから、
気を付けろよ」
そう告げると、大倉の胸を優しく叩き、
背中を向けてワイン部屋から出て行った