第8章 肖像画
すると彼は、優しく私を見つめ
丸山「そうですね、この絵は本当に綺麗です」
そう言って、愛しそうに見つめ続けていた
私は、そんな彼の横顔を見ていた。
その絵にも負けないくらいに美しい彼の横顔を。
すると彼は、そっと私に伝えた
丸山「人は、知らなくていい事を知った時、
決して幸せになれないんですよ...」
私は驚いて彼を見たが、彼は悲しそうに俯いた
丸山「そう、後悔しかないですよ」
私の顔が焦ったように赤くなる
私が彼らを探ってる事がバレているのを
理解したから。
「でも、私はそれでも真実を知りたいんです、ずっとそうやって生きて来たから」
私は、自分の気持ちをぶつけてみた
すると彼はゆっくりと動き
丸山「貴女は強いんですね、
それが裏目にでない事を祈ります...」
そう私に伝えると、静かに部屋を出ていった
私は、一人取り残され壁の肖像画を見た
このマリア様は全てを見ていたに違いない
もし、教えて頂けるなら教えてもらいたい
絵に願って教えて頂けたなら 楽なのにと
私は一人で笑ってた
そして、私も部屋を出て、走り出した
角を曲がって行く彼女を見つけたからだ
私は必死で走った
彼女を捕まえて、誰なのか聞きたかったから
彼女を追って、角を曲がった瞬間、なにかにぶつかったような衝撃を受けた
錦戸「いたぁーーーっ!!!!」
彼とぶつかり、二人で倒れてしまったのだ。
安田「お客様、大丈夫ですか?」
安田は、倒れている私を起こそうとした
錦戸「アホ、俺のが思いっきり転げたやんけ!」
錦戸は怒りだした
そんな錦戸を見ながら、安田は苦笑いしていた
「ありがとうございます、あっ、痛い...」
私は肘を擦りむいて、
傷口に血が滲んでいる事に気付いた。
私は、彼らの鼻が血の匂いを捉えるのを見た
錦戸は自分の身体をゆっくりと起こして、
まだ倒れてる私を見つめた
私は声が出ないほどに驚いた。
彼の瞳は真っ赤に染まり、私を見つめていた
そして、彼の綺麗な唇から、
妖しく光る牙が覗いていたのだ。