第5章 心
私はすごく緊張していた。
私に料理を持って来てくれた人が、
それはまた、たいそうな男前だったからだ
錦戸「お待たせして、大変申し訳ございません...」
彼は優しくそう言うと、私の前に料理を並べ始めた。
「あ、ありがとうございます」
自分の頬が赤くなるのが分かった
やはり、「ここの従業員はホスト並みに
男前揃い」、という噂は嘘じゃなかった...
この人達はなぜ、
女の人達を誘拐してるんだろう?
そう思い彼を見つめていると、
彼と目があってしまった。
錦戸「どうなさいました?」
彼は優しく微笑んだ
「な、何でもないです...」
私は焦って、フォークとナイフを取ろうとしたら
指がもつれて床に落としてしまった
床に落ちたフォークを見つめて、必死に頭を下げた
「す、すいません...」
慌ててフォークを拾おうとした時だった。
彼も拾おうとして、手が触れてしまった
私は一瞬で手を引いた。
彼の手が氷のように冷たかったから。
そう言えば、
さっき部屋を探ってた時に怒られた人に
腕を掴まれた時、
あの人の手も、氷のように冷たかった...
私は、彼を見つめた
錦戸「どうされました?」
彼は静かに微笑んだが、
私はゆっくりと首を振って答えた。
そうすると彼は頭を下げて部屋を出ていった
去って行く彼の背中を見つめ
この人達への不信感は
次第に大きくなって行ったのだった。