第25章 国彦の手
「俺の声、聞こえるか!」
「な、なんとか!」
「聞こえます!」
お兄ちゃんはテキパキと指示を出す。
「天井に穴が開いてるだろ!その穴に入れ!」
「どうやって!!!」
「穴の真下に立つ!以上!」
その言葉が合図だったかのように皆はなんとか穴の真下に移動する。
「明、立て…ないか」
お兄ちゃんは私をヒョイと抱えて穴の真下へ移動する。
「捕まってろよ。」
お兄ちゃんはマフラーを首からとって思いっきり穴へ投げた。長いマフラーは難なく穴の中へ入る
すると、私達の体は穴へ吸い込まれるように宙に浮いた。
お兄ちゃんは思いっきりマフラーへ手を伸ばす。穴へ入ったマフラーを掴んだ瞬間、皆吸い込まれていった。
穴の中は水中みたいだった。しかし…
「マテェツカマエテヤルゥゥゥ!!!!」
「国彦さん!」
「わかってる!全員俺に掴まれ!」
皆がそのとおりお兄ちゃんの服の端をつかむ。
「もう一回!」
再びマフラーを上へ投げる。そしてお兄ちゃんはそれを掴もうとして、私達の体がマフラー目掛けて浮いてくる。
ここまではさっきと同じだった。一つ違うのは天地がひっくり返ったこと。
「逆さまに…!」
一回転して先頭をきっていたお兄ちゃんは、誰よりもはやく天井だった地面に着地した。
ダン!!!!
あ、今の絶対痛い…
「うぅっ…!」
お兄ちゃんのうめき声。
すると着地した地点にヒビが入り、そこに大きな大きな穴が開いた。私達はそこへ吸い込まれた…
目が覚めれば現実ではないほうの楽器庫だった。
水中にいたはずなのに、一切ぬれていない。
お兄ちゃんは四つん這いになり、大きく息を切らしていた。
咲姫ちゃんは怖かったのか少し震えている。赤司くんがそれを慰めて、小林くんと桜井くんは今一状況が分からない様子。
って私もだけど。