第25章 国彦の手
「まじでか!なら他の皆よばねぇと…!」
「無理。ここは完璧に外と隔離されてる。あの事件が切っ掛けで。それに窓が開いているのはこの5階だけ。
あとは全部窓の代わりにシャッターがしまってる。それにさっき扉の前のやつみたいにここにもアイツらはいるんだ。」
国彦さんの言葉に小林さんは黙り込んだ。
「ならなぜ僕達をここへ呼んだのですか…?」
「言っただろ。一旦合流だよ。明と咲姫が目を覚ましてから戻る。」
「おいてった方がいいんじゃないですか…?」
桜井くんの言葉に僕も同意だった。
だが…
「一番重要なこと忘れないでくれる?咲姫が今回のターゲットなんだから咲姫がいないと何も始まらない。
それに明を置いていくのは駄目だ。君達が向こうの世界で脱出できても明はずっとこの現実の施設に閉じ込められる。」
「あ…そうですね…スンマセン」
国彦さんはすっと目を細めた。口元はマフラーでよく見えないが……
笑っ………た…?
「スンマセン、ツボ。」
「えぇ!?スンマセン!」
「イヤだからさ。」
笑ったのは一瞬だけだったがとても柔らかい優しい笑顔だった。
「ねぇ、このあと戻ってどうすんのー?」
「小林さん…国彦さんは三年生ですよ!」
「え、桜井くんそれ早く言って!?」
「……いいよ面倒くさいからそういうの。ていうか敬語嫌いだから逆にやめて。
で、これからどうするかってことだけど。」
国彦さんは天井を眺めた。
「ごめん、わかんない」
半ば投げやりの言葉に少しムッときたが言葉にはださなかった。
年上ということもあったが、何も知らない僕が何か言えたことではないからだ。