第25章 国彦の手
「そういえば、ここって携帯つながるんですね…」
「中にいる通しならつながる。中と外は無理だけど…だいたいの奴はここに来るときに携帯を持ってなかったりするけど。」
国彦くんはポケットに手を突っ込んだままその場に座った。
私は桜井くんと目を合わせた。明ちゃんとの電話のとき、ポケットから出した国彦くんの手…あれは何だったのだろうか。
「国彦さん…でしたよね?」
「うん。誰?」
「赤司征十郎です。洛山高校の一年生です。」
国彦くんは征十郎を見もせず明後日の方向を向いている。
「ここは一体何なんですか?何故あんな穴から飛び降りろと…」
「ここは……」
国彦くんは明ちゃんの方を見た。明ちゃんはフワァ…と欠伸をしている。
「………また今度」
国彦くんはそう言って目を閉じた。あぁ、なんか私も眠い。
「…咲姫は24時間動きっぱなしだからな。僕達は少しずつ休憩をとっていたが……。少し寝た方がいい。もう夜だからな。」
「明も寝ろ。」
「はぁい…」
明ちゃんと私はそう言われるやすぐ眠りについた。
変な夢みませんように…
「……寝たか。」
「国彦さんは寝なくていいんですか?」
「俺はいいよ。どうせここじゃ寝られない。」
国彦さんはそう言っていたが、とても眠そうだ。
「さっき、ここが何なのかって聞いたな。」
「はい…」
「ここは現実だ…。欲望が作り出した世界じゃない。本当に現実に存在する施設だ…。」
国彦さんの言葉に、桜井くんが反応する。
「え!それじゃあ脱出したってことですか…!?」
「……一応は。」