第24章 飛び込んで
「く、国彦くんやるね…!私といい勝負だね。」
「……」
「無視!?」
「咲姫ちゃん、元気になってきましたね!」
「桜井くぅぅん!私の味方!!!!」
外でそんな賑やかな声が聞こえてきて…
「開けろ」
ようやく待ち望んだその言葉。明さんは怯えていたのが嘘のように立ち上がり、ドアを元気よく開けた。
「お兄ちゃん!私、ドア開けなかった!」
「ん」
「それでそれで、なんか超かっこいいこと言えた!!!!」
「ん」
まるで兄弟の会話とは思えなかった。
国彦さんのあとに続き、桜井くんにおぶられた咲姫が入ってきた。
「おおお!お久しぶりでございます!!!!」
「渡辺さんトリップしすぎー…なんかもう、つかれた…」
「全く、人の気持ちを知らずにどこまでも脳天気だな…!」
そんな僕らの台詞など聞こえていないのか、桜井くんにおぶられながら咲姫は上機嫌だった。
「ねぇお兄ちゃん、ここって何なの?普通じゃないよね?」
「あぁ、そうだな。」
国彦さんは曖昧に答えた。桜井くんからおろしてもらい、地面に立った咲姫はトテトテと明さんの元へ歩み寄った。
「じゃあ私が説明してあ…」
そんな咲姫を国彦さんが無理やり引っ張った。
「え、痛い痛い!はなして!!」
国彦さんはパッと手を離す。咲姫はその反動でよろけた。
「うわわっ!」
「咲姫!」
とっさに咲姫を支える。
「ありがとう征十郎…」
「いやいい、けがはないかい?」
「うん、お陰様で。」
密かに国彦さんを睨んだ。だが彼はほんの少し視線をこちらに向けただけだった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「あ……悪い」
国彦さんはコッソリと僕達に耳打ちをした。
「明にはこの施設のことを話さないでくれ。何も背負わせたくないんだ
……………頼む」
最後は消えかけた小さな声だった