第24章 飛び込んで
「ん…ここは…」
目を覚ますと穴から飛び降りたこと以外何一つ覚えていなかった。
「あ、起きたか…」
ヒョッコリ顔を見せてきたのは小林さん。明さんもノソノソとやってきた。
「気分はどう?私達、目覚めたとき吐きそうだったんだから。」
「はい、大丈夫です。」
「さっすが赤司だ!で、ここどこ!?」
小林さんの鋭いツッコミで我に返る。この教室には天井に大きな穴があった。あそこから落ちてきたのだろうか…。
「別館なのかな?でも、さっきとは違って楽器がたくさーん。」
明さんはホラ!とそこらへんに転がっていたケースを取り出した。古臭いトランペットが入っていた。
明さんはすばやく組み立て、構えた。
パパパパーンパパパパーンパパパパーン!!!!タッタカタッタッター!
小林さんと僕は目を見開いた。なんと明さんがトランペットでファンファーレを吹いたのだ。
「わぁ、いい音なるぅ♪もらっちゃだめかなー…」
「明さん、吹けるんですか?」
「うん!吹奏楽部なの、私!トランペットやってるの!」
明さんは照れくさそうに微笑んだ。そして丁寧に楽器をしまうと、携帯電話をとりだして電話をかけた。
「もしもしお兄ちゃん?」
『お前今…トランペット吹いただろ。』
「うん?何でわかったの?」
『丸聞こえだよ…咲姫がビビって腰ぬかして動かないんだよ…。』
「え!ウソウソ!ごめんごめん!!!!」
それを聞いて僕は早く咲姫の元へ行ってやりたくなった。怯えている咲姫を、落ち着かせてやらないと…。
『明、もう楽器は吹くな。そこにいろ。今から迎えに行くから。開けろって言ったら開けろよ。』
「うんわかった!開けろ、だね!!!!」
『そのまんまじゃなくてもいいけど…明ってそこらへんややこしいな。
まぁ咲姫は桜井くんにおぶってもらうとするか。俺は訳ありで手が使えないからな。
10分ぐらいで行くから待っとけ。』
「うん!10分ぐらいだね!待ってる!!」
『あぁ、もう面倒くさいな。それでいいよ。どうせ10分過ぎると開けないんだろ。急いでいくよ。』
「早く来てね!10分!約束!」
明さんは国彦さんの言葉をずっとオウム返ししていた。
それが不自然で、小林さんと僕は首を傾げた。