第24章 飛び込んで
「そこが見えませんね…」
「僕、高い所むり…」
小林さんは青ざめた顔をして数歩下がった。
「お兄ちゃん、飛び降りろって言ったよね…。信じらんない……!」
明さんは腕をさすって身震いをした。
「うう…でも飛び降りなきゃ…!」
「え、本気!?」
「だ、だってお兄ちゃんに言われたもん…!ちゃんとお兄ちゃんの言うこと聞かなきゃ…。そうじゃないと、私……!!」
明さんはブルブルと頭を降った。
「あー、落ち着いて落ち着いて…!」
「さ、先に行ってる!!!!」
小林さんがとっさに腕をつかんだが止められず、明さんと小林さんは穴へと落ちていった。
「うわぁぁぁぁ!!!」
「小林さん!明さん!」
下から二人の声は聞こえない。それどころか二人が落下した音さえ聞こえない。
「…本当に底がないのか?」
僕は穴を覗き込んだ。だが何も見えない。
しかし咲姫に会う手段はもうこれしか…
僕は気がついたら穴へ体を投げ出していた。
ドボン
水に入ったような浮遊間と音。だが息はできる。
目の前には眩しく輝く光があった。なんだろう、と手を伸ばしてみる。
「やめろ、触らない方がいい。」
誰かが僕の手をつかんだ。光があるところ意外は暗くて何も見えなかった。
「誰だ?」
「誰でもないさ。全てを無くして人間でもなくなった悲しい存在?なーんか中二病みたいだね。
前の二人もそれに触ろうとしてたよ。なんで光るものに触りたがるんだか…。
そんなもの、光ったって中身はさびてるかもしれないじゃないか。」
その人は僕の右側を指差した。
「出口はそっち。まぁ出るときには僕のことなんて忘れてるから自己紹介なんて必要ないね。バイバイ。」
促されるまま僕はその方向へと進んでいった。
水中のような感覚に上手く歩けなかった…