第23章 明
だだっ広い廊下に張り付けられたようにたくさんあるドア。その中の一つに楽器庫とレトロな字で書いてあった。
「開かない…けど。」
「もう!お兄ちゃんったら信じらんない!!!!」
今度はテレビ電話ではなく普通に電話をかけた。
『明ちゃん、どうした?』
「あれ?咲姫ちゃん?お兄ちゃんは?」
『んーと、今は国彦くんの番なんだ。』
「はい?」
咲姫は昔から説明が下手だ。相手が自分の言いたいことをわかっている前提ではなしている。
『あ、終わったみたい。今変わるね!』
『もしもし、明か。何だどうした。』
その声を聞いて驚いた。息が切れているようで何を言っているのかよくわからなかった。
「何してるの?」
『関係ないだろ。』
「まーたそういうことを言う!」
「明さん、話しを元に戻してください」
兄弟喧嘩をやられてはたまらない。僕はわってはいった。
「あ、ごめんね…。えと、楽器庫ついたんだけど鍵がかかってて…」
『だろうな』
「だろうな!?」
『内側に鍵がかかってるんだ。ドアぶっ壊して。じゃ。忙しいから。』
「は!?ちょ!息切らして何やってんの!?」
『だから関係ないだろ。』
強引に電話はきられた。明さんはガン!!!!と楽器庫の扉を蹴った。
「は」
「え」
ガッシャー…ン
いとも簡単に扉は粉砕した。明さんは頬をプーッと膨らませていた。
「お兄ちゃんのバカ!扉ぶっ壊しただけじゃ怒りがおさまらないじゃんかぁ!!!!」
「うん。落ち着いて早急に頭冷やして!?」
小林さんが必死になだめる。その間に僕は楽器庫を観察した。楽器庫という割には楽器らしきものが見あたらず、
唯一あったのは大きな穴だった。