第23章 明
「今どこにいるの?」
『えー!?わかんなーい!てか明ちゃんもここに来ちゃったんだ…国彦くん、どうする?』
『一回合流だな。明、多分お前別館にいるだろ。』
明さんはここって別館?という視線を投げかけてきた。小林さんは頷いた。
「うん、そう。」
『んじゃ楽器庫って書いてある部屋に入れ。そこに大きな穴が開いてるはずだからそこから飛び降りてこい。』
「え、それ死ねってこと?」
小林さんはウワァと顔を歪ませる。
『…誰だよ』
『小林タイカさんです!誠凛高校の…って国彦さん!もう来てます!!』
『は、嘘だろ!?おい明!とにかく言うとうりに動いてそのお二人さん連れてこい!』
「え?お兄ちゃん来てるって何が!?ちょっとっ!!!!」
ブチッと電話が切れた。明さんは携帯をポケットにしまった。
「うん……とにかく楽器庫…だっけ?そこ探そう!」
「え、穴から飛び降りる気!?」
小林さんは混乱しているようだった。
「あの、明さん…」
「はい?」
「咲姫と一緒にいた人はいったい…そして、咲姫とはどういう関係ですか?」
僕の質問に、明さんは一瞬黙り込んだ。言うのをためらっているようだ。
「…咲姫ちゃんはいとこだよ。咲姫ちゃんと一緒にいた人は私のお兄ちゃん。渡辺国彦っていうの。あと…」
明さんはそこで言葉を止めた。額を抑えている。
「ごめん、また今度でいい?まだ混乱してるの。」
「はい。大丈夫です。」
明らかに尋常じゃない様子に僕らは顔を見合わせた。
だが深追いはせずに楽器庫を目指した。
「楽器庫って、吹奏楽部が楽器置いてる部屋みたいなもの…だよな。」
「音楽室の近くかもしれませんが、別館にあるって聞きましたよ」
二人で悩んでいると、いきなり明さんがスタスタと歩き出した。
「明さん?」
「とにかく歩こう。こんな所で止まってたら何が来るかわかんないもん。」