第23章 明
咲姫が消えた。また消えた。
僕は何もできなかった。
「赤司、そう落ち込むことないと思うよ。」
隣を歩く小林さんの言葉を頭に入ってこない。
「キャーーーーーーーーッ!!!!!」
突然、廊下に声が響いた。
「な、何だ!?誰!?」
咲姫の声ではない。小林さんはバッと振り向いた。
後ろからドダドダドダ…と足音が聞こえてくる。
一番先頭に、前髪を真ん中分けした女の子が見えた。
高校生らしい。雰囲気的に僕より年上だろうか。
その後ろにゾロゾロと化け物を引き連れている。
「わー!何じゃこれ何じゃこれ何じゃこれー!!!!走るぞ赤司!」
小林さんに引っ張られ走る。だが足が重い。
「そ、そこの人!ちょっと待っ……!」
突然後ろの少女の声が消えた。振り返るとあの化け物うち一匹に足を捕まれていた。
「ツカマエタ」
恐怖で引きつる少女の顔は、一瞬咲姫と重なって気がついたら僕の体は動いていた。
「小林さん、僕はあの少女の足を掴んでいるやつをなんとかします。」
「じゃ、後ろは任せろ。」
少女の元へと戻り、彼女の手を引き、足元の化け物を思いっきり踏み潰す。
「ギャアアア!!!!」
醜い声を上げ、動かなくなった。
「小林さん!」
小林さんの方をみると満面の笑みだった。
「好き勝手殴れるっていいね!」
血まみれの手でそう言われた。足下には…何でもない。
「えっと…なんていうか…どうもありがと。」
少女は照れくさそうに礼を言った。つり目でフワッとした癖毛が咲姫を連想させた。
「私、渡辺明(わたなべめい)。高校二年生。あなた達は?」
「僕は赤司征十郎。一年です」
「俺は小林タイカ。同い年!」
名字も咲姫と一緒だとは…明さんはそんなこと気にもせず笑っている。