第22章 少年
「あの、国彦さんはどうしてここに…?あと、僕達なにもわかってなくて…」
「いい。全部話す。長くなるけど。」
そうして国彦くんは語り出した。それはとんでもない真実だった。
俺は一回ここに来たことがある。その時は、香太郎…だったかな。そんな男の子が俺を外に逃がしてくれた。
この青白い部屋は、俺がアイツと出会った場所…
佳寿郎と出会った場所。アイツは復讐とかどうでもいいと言った。でも、死にたくないとも言った。
アイツの存在理由は復讐。それを否定した瞬間アイツは死ぬ。
それが嫌だと言っていた。
香太郎はアイツを止めてほしいと言った。
でもそれは俺にはできない
俺の…俺の親父は、この施設を襲った張本人だからだ。
施設の子供を殺し、父親である施設の先生まで殺してしまった。
俺とお袋は犯罪者の親子というレッテルを張られ、密かに静かに生きてきた。
親父がなぜあんなことをしたのか…よくわかっていないがこの世界があるのは俺の親父のせいだ。
俺はこの世界から出たあと、必死に佳寿郎を探した。
佳寿郎はとある病院の一室でたくさんの管をつけられ静かに眠っていた。
「佳寿郎の側に近づいたら、なぜかここに来ちまった。咲姫、わかったか。俺の親父は俺達のじいさんを殺してあげくの果てに施設の子供を皆殺しにした極悪人だ。
俺は親父が何でそんなことをしたのか知らないし興味もない。でも、俺はその責任をとりにきた。お前は、どうしてここにいるんだ?」
長い語りのあと、国彦くんはそう聞いてきた。私は予想外のことをいっぺんに言われたが、案外落ち着いていた。
「私が、ここにきたのは…………」
『現実はどこにある?』
『こんな悲しいことがどうして終わらなイ?』
『兄さん、ごめんね。』
全部繋げて導き出した答えは
「家族に会いたかったから…全部知りたかったから。きっと、全部忘れちゃいけないことだったんだ。
でも私は忘れてしまった。それを思い出そうとしてるんじゃないかな?」