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脱出せよ【黒子のバスケ】

第22章 少年


「あれ?さっきまであんな人、いなかったのに…」


桜井くんがそう言ったが、聞こえていないのかその少年はただ机に座ってボォーッと窓の外を眺めている。

窓から風が吹いて、少年の髪を揺らす。とても神秘的な光景だった。


「またか…」


少年は一言呟きまばたきをした。桜井くんと私は固まってその少年に見とれていた。

だが少年は流石に違和感を感じたのか机から降りて私達に近づいてきた。

制服の冬服を着て、首にマフラーをしている。スクールバッグをダランと持ち、ポケットに手を突っ込んでダルそうに歩いている。

口元はマフラーで見えないが、恐ろしいほど顔が整っている。

その少年と目があった瞬間、私の中でとある記憶が蘇り気づけば私は声を出していた。


「くに…ひ…こ…くん…?」


少年、国彦くんは目を見開いた。気だるげに開いているジト目はやはり、国彦くんだ。


「知り合い?」

「えと………いとこ……だよね?」

「咲姫…か…?」


私を見下ろす顔は昔と変わらない…










「咲姫、お母さんのお兄さんの息子…あなたのいとこよ。」


小さい時、家に一度だけ遊びに来た。2つ年上の国彦くん。


「咲姫です!よろしく!」

「ん…」


私が差し出した手をチョコンと握る。冷たい手だったのを覚えている。


「国彦くんは、何が好き?」

「自由」


小さい男の子の言うセリフではないようなことを国彦くんはよく言っていた。










その、国彦くんだ。なぜここにいるのだろう…


「渡辺国彦。なんとでも呼んで。高3だから。」

「へ!あ、自分は桜井良です!!」


表情を何一つ変えずに国彦くんは喋る。
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