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脱出せよ【黒子のバスケ】

第20章 ***とともに


目が包帯で覆われているから見えないはずなのに、女の子は私達の方へと近づいてくる。

ペタペタ…ペタペタ…

靴を履いていない女の子は音を立てながら歩いている。

ボサボサの黒髪で、ボロボロのワンピースを着ている。

顔は整っているようで、包帯をとれば美人だろう。


「突然押しかけたご無礼をお許しください。」


丁寧な口調で女の子は話し始めた。


「渡辺咲姫さんに用があって参りました。」


その瞬間、征十郎が私の手を引っ張った。小林さんと頷きあう。

どうやら逃げようとしているらしい。


「ちょ、ちょっと待って!ねぇあなた、私に用があるんでしょ?用って何?」

「咲姫!」


征十郎が更に手を引っ張ったが、私は負けじと女の子に話しかけた。


「あなたは誰?この施設と何か関係があるの?」


女の子はジッと黙っていた。長い沈黙が耳に痛い。


「…………いきなり突飛な事を言ってしまえば警戒されて当然ですね…申し訳ありませんでした。」


律儀に頭を下げ、女の子は話し続ける。


「私は、この施設にいたものです。正体を開かすことはできません。」

「そういう人、信じられると思う?」


小林さんは敵意むき出しで女の子を睨んだ。


「小林タイカ、ですね。あなたがここにいた頃、お会いしたことがあります。まだ赤ん坊でしたね。」

「俺、この施設のこと何にも覚えてないから嘘言ったって駄目だぜ。」


女の子はそれを聞き、少し悲しそうな顔をした。


「そうですね…。ならば信じてもらえなくても大丈夫です。私は今、渡辺咲姫さん一人に用があるのですから。」


征十郎は動こうとしない私をチラッと見た。
動く気のない私はフンと顔をそむけた。


「あなたに拒否権はございません。もう一度、飛んでもらいます。では、お身体に気をつけて……」


え?と思ったが遅かった。私は、次の瞬間にはもう全く違う場所にいたのだった。

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