第19章 解答
目が覚めると気分は最悪だった。なんだかだるい。
それに
(私、泣いてるし。)
夢の中ならいいけど、現実はご遠慮願いたい。
「んー?起きた?起きたねぇ。赤司くん。起きたよ。渡辺さん起きてるよ。」
ヒョコッと顔を出したのは小林さんだ。そして次に顔を出したのは征十郎。
「………良かった」
脱力して私のそばに座り込む征十郎。あ、そんなに心配してたのか君は。
「や、びっくりしたびっくりした。保健室から出てみれば廊下血まみれだもん。桜井くんはどこにもいないしさ。」
ケラケラと笑う小林さん。しかしはっとして口を閉じた。笑う場面でないと思ったのだろう。
「お姉さン、あーちゃんに感謝してヨ?」
またまた顔を出したのはこーちゃん。
「リアちゃんに?」
「うン。あーちゃんが生命力をお姉さんにわけたんダ。あーちゃんがいなかったらお姉さん死んでたヨ。」
「生命力?それって大丈夫なの!?」
こーちゃんは何も言わなかった。征十郎と小林さんも黙っていた。
「僕が思う二…あーちゃんはこの悲劇を終わらせるとかはどうでも良かったんじゃないかナ。」
ポタポタと彼の瞳から涙が零れ落ちる。
「たダ…昔みたいにっテ。皆と一緒にいたかったタ。施設の欲望が消えれば皆と会えなくなル。あーちゃんはそう思ってたのかもネ。
死んだの二、生きてるんだもン。僕たちハ。こんな悲しいことがどうして終わらなイ?
だから、あーちゃんはお姉さんに全部たくしたんじゃなイ?」
こーちゃんの涙をぬぐおうと手を伸ばした。
「残念」
触れると、とても暖かかった。あの冷たい体温ではなく、生きた人間の体温だった。
「僕はもう時間切れだヨ…あーちゃんが消えれば僕も消える約束をしてたんダ。あーちゃん、寂しがりやだかラ
…ありがとバイバイ。楽しかったよ。」
フワァと彼の左目から包帯がとれた。そこには腐敗した皮膚ではなく、普通の彼の顔があった。
開かれた左目はもう何年も開けていないのか少しにごっていたが、すぐに透き通った色に変化した。
最後に零れ落ちた涙は、はじけてこーちゃんとともに消えた。