第19章 解答
「ずっと、思ってた。言わなきゃって。」
ーー誰だろう。
フワフワした気分のなか私は暗闇に立っていた。
目の前に、誰かがいる。
多分、男の人。
「でも、言えなかった。いや、言わなかった。俺の顔すら覚えてないお前に、どう伝えたらいいかわからなかった。」
若い人だ。すごくつらそうな顔をしている。
「お前はとてもいい子だ。人の心がわかるし、他人のためなら自分の命だって捨てる。思いやりのあるいい子だ。よく真紀に似ている。」
お母さんの、知り合いかな?
「でもお前は、自分自身の気持ちをわかっていない。」
???どういうことだろう???
「他人を思うあまり、自分の心をわかっていない。お前は不安定で、とても弱い。そこは、俺に似てる。だからお前は強くなれ。」
よく意味がわからなかったけど、なんでだろう。
ポロポロと、涙が出てくる。
「お前が俺達を思う気持ちはわかる。でももういいだろ。自分を解放しろ。自由に生きろ。」
涙が出てくるのは、この人が誰だかわかっているから。でも、信じられない。だって。
「お前は、自らの意志でここにいるんだ。俺と真紀に会いたい、という気持ちで。
それを断ち切れ。俺達のことを忘れろとは言わない。前を向け。自分自身に勝たないかぎり、お前はここから出られない。」
もう、涙が止まらない。
目の前にいる
お父さんの言葉に。
「大好きだぞ。咲姫。」
そこで声は途絶えてフワフワした気分もなくなった。