第19章 解答
「復讐する相手もいなければ復讐する理由もないんだ。」
かつて彼は、こう言った。
「なら僕の存在理由は?」
わからない、と私は首を振った。
「だからさ、むりやり存在理由を作ろうと思う」
あぁ、なぜ私には彼を止められないの。なぜ私自身が彼を止められないの。
「咲姫ちゃん!咲姫ちゃん!」
「アハハハハハハハハハハハハハハ!」
目の前には、血まみれのあの子の名前を必死に呼ぶ桜井くんと、それを見て狂笑しているあの子。
そして隣には赤髪の子。
「………変なこと考えないでね。間に合わなかったのはしょうがないの。」
「それで、咲姫を失って平気でいろって言うのか…?」
連れてきたの、間違いだったかしら。
私はフゥ、と溜め息をついた。
(まいったわね。私には香太郎みたいにあいつを攻撃できないわよ。)
連れてくるべきは香太郎だった。
「冷静になりなさい。ターゲットが死ねばこの世界はあなた達を外へと導く。でも、まだあなた達はここにいる。生きてるわよ、彼女。」
ギリギリね。とつけ加えるのを忘れない。
「……助からないのか?」
「あら、消極的なうえに物わかりが早くて助かるわ。」
(どうして、かしらね。笑いが止まらないの。)
「香太郎に、よろしく言っておいて。」
満面の笑みで私は歩き出す。鼻歌も歌える。なぜかしら。とても気分がいいの。
「あれ?リア姉さんじゃん。」
「桜井くん。短いつきあいだったけど、楽しかったわ。あなたも、元気で。ほどほどに、ね。」
あの子に別れを告げて。桜井くんにも別れを告げて。
そっと血まみれの彼女に手をさしのべた。
「私の生命力を全部あげるわ。
目覚めなさい。」
時間が止まった。
最後に見えたのは、綺麗な赤色。
(朝焼け色、ね…。)
そして目を閉じた。