第14章 モード、1。振り出しに戻る。
「小林さん、こっから先は無理っぽいっすね」
「いいや行く。」
ずっと木があったのに、突然木のない広い草原に出た。あたり一面、草。影が一切ないのでもろに紫外線をうけることになるが…
それでもかまわねーと小林さんは日向へと足を進めた。
「俺のせいで止まることはないし。」
頑として譲らないようなので心配だがそのまま歩き続けた。
「ほんと、ここなんなんだよ…。」
さつきちゃんのパーカーにくっついたひっつき虫をとりながら青峰君がぼやく。
そのとき
ザワザワァァ…
風が吹いた。
「わ、強…」
「咲姫!スカート!もうちょい!」
「青峰君の変態ーーーーーーっ!」
あわててスカートをおさえる。
だが風はなかなかやまない。やむどころかますます強くなっている。
そのとき、私は見た。
「何……これ」
太陽が、目に見えるスピードで動いている。朝になったり夜になったりを繰り返している。
他の三人はどうだろうか。風が強くて目も開けられない。
かろうじて少し開ける。
飛び込んできたのは白色。
「小林さんっ……!」
強く吹く風に微動だにせずこっちを見る。
ふわり。
「“……………”」
強い風がやみ、おだやかな風が吹く。太陽が夕日の空に浮かんでいる。いつの間にか草が腰あたりまで育っていた。
まるで、未来に来たみたいだ。
「“……………”」
青峰君と火神君はどこにもいない。
小林さんが、何かしゃべっている。
「“……………”」
ふわり。
サラサラ…サラサラ…
草のかすれる音が耳に心地よい。
「また、ここで。無事でいて。」
また風が吹いた。踏ん張って目を開ける。かすかに開いた目からは
小林さんの微笑みが見えた。