第12章 泡沫の記憶たちと
「お前になんかあったら俺が赤司に怒られるっつーの!………怒られるだけじゃすまねぇか。」
「僕も真紀さんに顔向けできないヨ!」
「………ごめんね?」
テへと謝るとこーちゃんはため息をついた。
「お姉さんってば真紀さんと全然似てないよネ。お父さん似?」
「咲姫は親父いないぞー?産まれる前にいなくなったんだろ?」
「うんうん。そうだよ。私、お父さんいないから…。しかもお父さんは私と全然似てないよ?」
するとこーちゃんの顔はけわしくなった。
「僕を馬鹿にしてル?産まれる前にいなくなるっておかしくなイ?お父さんのこと覚えてるんでしょ?」
「……あ。」
そういえばおかしい。お母さんには私が産まれる前からいなくなったって聞いてたのに、私自身お父さんとの記憶はあるのだから。
いったいいつからおかしくなった?
「…そういやなんか変だな。どういうことだよ?」
「私にもわかんない!」
しばらくうーんとうなってみたが結果はかわらず。
「なんか複雑だなお前の家庭事情。」
呆れかえったように言う青峰君に返す言葉もない。
「まぁ真紀さんの選んだ人だから良い人だったんだろうネ。うんうン。」
「なんで上から……!?」
「つーかおめー、さっき香太郎から聞いたけどよ。なに重要なこと黙ってんだ。」
ビシッと本日二度目のデコピンが命中した。
「え?何のこと?」
「とぼけんな。お前の母親とかじいちゃんのことだよ。」
「ごめんお姉さン。知っておいてもらった方がいいかなっテ…」
申し訳無さそうにシュンとしたこーちゃん。
多分この子せめた瞬間私は、刑務所行きだと思いまーす!
そしてこの子のかわいさ罪だと思いまーす!